昭和の想い出ーその2
『座敷わらしと建て替えと』
七人目の家族
ちんじとのお別れは、まだ幼かったので、その瞬間ていうのは覚えてないんですよね。
でも、その存在は頭の片隅に残っていたりはします。
存在と言えば、皆さんは“座敷わらし”っていると思いますか?
いつからだろう?
僕の家には座敷わらしがいました。
迷信だと言われていますが、昭和から平成に変わる2年ほど前、僕が18歳になるまではたしかに実家に座敷わらしがいました。
見たことはないのですが、ウチの家族みんな座敷わらしの存在を感じていました。
その当時ウチは、祖母、父、母、姉、兄、僕と6人家族でしたが、7人目の家族と呼べるほどに皆、その存在を感じていました。
僕は幽霊とか亡霊みたいなものは一切信じていないんですが、あの頃の実家には確かに座敷わらしがいました。
家族全員、その不思議な存在を感じる出来事を何度となく体験していて、いつからか“ウチには座敷わらしがいる”ということで、皆納得するようになったのでした。
気配がするんですよね、それも確かな気配です。
建て替え前の実家は、木造建築でかなり古い家だったんですね。
家の二階に一人でいるときに、玄関が開く音が聞こえて、“母親が帰ってきたな〜”なんて思っていても誰も二階に上がってこない。
一階でなにかしているんだろうな、なんて気にしていなかったんですけど。
その後暫〜くしてから、一階のトイレに行ったんですけど、母親はいない・・・。
“あれ?又どこかに出掛けたのかな?”そんなことを思っていたら、母親が勢いよくドアを開けて帰ってきたので、「アレ?さっき帰ってこなかった?」って聞いたら「帰ってきてないよ、座敷わらしじゃない?」、みたいなやりとり、そんな日常でした。
そんな体験をする時は、大抵一人のときだったので、どこか“気のせいかもしれない”とも思ってもいました。
築年数の経った家だったし、湿度とかで家が軋んだりしているんだろう(でも気配を感じていたのも確かでした。)
二人同時に感じた座敷わらしの気配
そんなある日、“これはもう、間違いなく座敷わらしが居る”そう確信する出来事がありました。
ある日の夕方くらいの時間、僕と兄は二段ベッドの上と下でお昼寝(?)をしてました。
僕には4歳年上の兄がいて、二段ベッドの上で兄が寝て、下で僕が寝ていました。
年齢的なことは本当に覚えていなくて、たぶん僕が小学生で兄が中学生くらいだったんじゃないですかね。
季節はおそらく、今頃の梅雨時期か秋頃の少し肌寒い日だったと思います。
夕暮れ時の肌寒い日は、僕と兄は寝るでもなく布団に包まったりしていたからです。
寝ているか寝ていないか、微妙な感覚の中で、一階の玄関が開く音がしました。
祖母の気配です。おおよそいつも通りの時間の祖母の帰宅です。
その後、みしみしと階段を上ってくる音と気配がしました。
祖母の部屋は2階の階段を上ったところにあったので、自分の部屋に入るんだな、と思っていました。
いつもの祖母のルーティーンです。
ところが、その日は違ったのです。
祖母の気配は、自分の部屋を通り過ぎて、ス〜っと僕たちの部屋の方へと向かってきました。
『何か話でもあるのかな?』僕はそんな風に思っていました。
祖母の気配は、僕と兄が寝ている部屋の閉じた扉の前で立ち止まりました。
部屋の前まできた祖母は、ドアを開けるでもなく話しかけるわけでもなく、立ち止まったままです。
僕は、ちょっと不思議に思いました。
いつもの祖母だったら、ドアを開けるか話しかけるかしてくるのに、どうしたんだろう?と思っていました。
時間にして5〜6秒くらいでしょうか、いや、もしかしたら10秒くらいの時間が経っていたのかもしれません。
僕がドアを開けてみようと思った瞬間に、上で寝ていたと思っていた兄が突然、二段ベッドから飛び降りて凄い勢いでドアを開けたんです。
兄が一言『 アレッ!? 居ない?! 』
僕は『えっ!?』そんなバカな?!とビックリしました。
僕が言うより先に兄が『今、ババちゃん帰ってきたよね!?』
僕もビックリしました、祖母が帰ってきた気配を全くタイミングで、同じように兄も感じていたからです。
そして二人で話をしたら、祖母が帰ってきたタイミングも、その後の階段を上る音も気配も、ス〜っと部屋の前まできて立ち止まったタイミングも全て一致していました。
座敷わらしがいることが確信に変わった瞬間でした。
でも不思議と怖さは全く感じませんでした。
それよりも、祖母の身に何かあったのでは!?と二人で心配しましたが、その後ほどなくして無事に祖母も帰宅してホッとしたのでした。
今思うと、あの座敷わらしは父を産んですぐに亡くなってしまったという、もう一人の祖母だったのかな〜なんて考えたりもするんですけどね、その祖母の命日が兄の誕生日だったりするのも縁を感じますね。
僕が高校を卒業した年に兄は台湾へと旅立っていき、実家を建て替えてからはもう、あの不思議な七人目の家族の気配を感じることは二度とありませんでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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